Half-Awakening, Half-Sleeping

日日の雑記と創作物に関する長めの感想の物置

ピエル・パオロ・パゾリーニ『王女メディア』(1969)

☆☆☆☆(初見)。パゾリーニ、そんなに観ていないのだけどひとまずこれが暫定ベストだ。

カットが移る毎に起こっている出来事が唐突に更新されてゆくという、(演者の顔に近いクローズアップとその切り返し、そして遠景を捉えたロングショットという極端に近いか遠い構図を取りがちなゆえの)この監督のある種の持ち味が、全編にわたって生きている。

ケンタウロスとして登場していたはずのクレオンの養父が突然人間の姿になっている冒頭は、けだしその法則的な無法則さの象徴。その後つづく生け贄の場面では、その犠牲にされる若者が、無邪気な笑顔をこぼしたり、その笑顔が徐々に凍り付いていったり、また破顔一笑になり、と思えばNOと叫びながら磔を避けようと暴れたりする。こうした感情の亀裂は主要人物たち──メディアやクレオンたちの内面にさえ例外なく入ってゆく。

それは、神話(ケンタウロスの養父)・現実(人間の養父)・神話的現実あるいは現実的神話(ケンタウロスの養父を通訳する人間の養父)をあっちこっちに飛び交う快楽とも言えよう。